ウエル・カルチャースクール【講師に聞く!vol.3】
日付:2022.10.12
講師:宮城 裕子 講師
ウエル・カルチャースクール企画【講師に聞く!vol.3】
第3弾は、「はじめてさんのおうちパン」講座の講師を務める宮城裕子先生にインタビュー。「おうちパン」とは?裕子先生のパン教室に込められた思いとは?
「全国料理学校協会教員師範資格 宮城 裕子」
-小さい頃はどんな子でした?
いつから料理を始めたのか記憶にない程、気づいた時にはよく家族に食事を作っていました。育ちざかりの弟が「姉ちゃん何か作って~」と母が作ったご飯だけじゃ足りないらしく、毎回何か作って食べさせていました。
小学生の頃は、従姉たちとケーキのデコレーションをしたり、クレープを焼いたりしてましたね~。料理が好きな子でした。
おばあちゃんが料理上手で小さい頃から料理しているところを見ていました。琉球料理でもちゃんと作っていて、影響を受けたかもしれないですね。
-小さい頃からパン教室の先生を目指していたんですか?
いいえ。最初は栄養士になりたかったんですよ。
だけどうちの高校から指定校推薦に栄養士コースがなく、家政科コースがあったので、家政科でもいいかと東京にある学校に進学。そこで家庭科の教員免許を取得し、家庭科の教師を目指すようになりました。ところが、教育実習で気づいたのですが「私、調理実習で料理を教えるのは好きだけど、お裁縫とか教えるのは苦手…。」ということでした。そこで、家庭科教師を諦め大手の食品会社に就職しようと考えるようになり…。そんな折、父親から沖縄に戻って公務員試験を受けるよう言われ、試験を受けると、一般の公務員試験にまさかの合格。…その時点で、料理を教えることを断念しました。
24~25歳から、お料理教室に通い、趣味としてお料理作りを続けていました。
「お料理教室の先生っていい仕事だな~。そこに私は行きたいな~。」という思いを胸に秘めながら。
-公務員からどうやって料理講師に?
私…公務員の中でも転勤族で佐賀や福岡など点々しておりました。公務員生活が9年くらい経った頃でしょうか…、福岡で料理講習会があり、九州中の有名な料理の先生方が一同に集まったんです。先生方の話し方やお料理している姿はとても魅力的で、それからしばらく経っても、あの時の感動を忘れられず、当時繋がりのあった料理の先生に相談してみました。
-「仕事をしながら料理講師になれますか?」
「通常の勤務を続けながら、料理講師になれますか?」と料理の先生に訊ねてみました。すると、「片手間では出来ない!」と即答され、その時に今の仕事を「辞めよう!」と決意。それから数年後に退職し、本格的に料理教室講師を目指しました。
-それから料理講師の資格を取りに学校に通ったのですか?
実は、公務員として働きながらも、合間合間に料理教室に通い家庭料理の技術検定の様な上級資格までは取得していました。
-そして、ウエル・カルチャースクールで講師を始めた?
違います。公務員退職後は、県外の料理教室に就職。全国展開している『辻クッキング』という料理教室で和・洋・中の家庭料理クラスを担当していました。
-え?パン教室の先生ですよね?
実は…家庭料理の講師でした。パンはちゃんと教えるようになったのは沖縄に帰ってきた2011年からです。
-パンは教えてなかったんですか?
そうなんですよ。ただ『辻クッキング』で家庭料理を担当しながら、パン教室の助手をやっていました。6年弱やってたかな~。
-パン教室の助手ってどんなことするんですか?
職人のレシピを生徒用に作りやすい分量に書き直したり、専門用語をわかりやすい言葉に作りかえたり、イーストやお水などの計量も任されていました。そこで、パン作りの知識・技術を養っていったんだと思います。
-パン作りで苦手なことってありますか?
もちろん!パンは計量が緻密で遠ざけてましたね~ハハハ。私は性格的にものぐさで、計量することが苦手で…パンは自分にとって一番遠い存在でした。私のパンのお師匠さんからすると、私がパンを教えていることにビックリだと思います。正式にパンの担当になってからは、「大事な計量だけは一人で責任もってちゃんとやりなさい」と言われ、イーストやお水など絶対間違えてはいけない物の計量も任せられるようになりました。そのくらいから計量は苦ではなくなりましたね。今では、パン講座の前日はコツコツ家で計量をしています。
「計量は趣味ですよ~」って言ったりしてハハハ。
-大好きなパンは何ですか?
パン全般、何でも好きですね。特に生地の食感を味わうバゲット(フランスパン)とかバターの香りをダイレクトに味わえるクロワッサンが好きですね。ライ麦とか全粒粉にしても、ナッツとドライフルーツがゴロゴロ入ったハード系も好きです。クランベリーとくるみの入ったパンはお店で見つけたらついつい買ってしまいますね。
-パン屋さんのパンを参考にしたりしますか?
入れる具材の組み合わせからヒントを得たりとか、成形を参考にしたりとか。生地だけ食べたり、焼けてるところと中の比率を見たりもしますね。あとは、設備等も遠めに覗けたりするお店は参考にしてます。
-ウエル・カルチャースクールの講師をするきっかけは?
2011年7月に東京から沖縄に戻り、当初、よんなーフードの嘉陽かずみ先生に講師依頼があったのですが、まだ沖縄でキャリアのなかった私に嘉陽先生が「裕子さん、やってみたら?」とお声かけしてもらいました。それがきっかけです。その時、ウエル・カルチャースタッフに「何ができますか?」と尋ねられ、家庭料理とパンを教えられることを伝えた、当時ウエルにはパン講座がなく、「パン講座をやって欲しい!」と依頼され、パン教室を担当することになりました。ベテランの料理の先生たちに挨拶にも行きましたよ。
-パン講座をやって、大変だったことは何ですか?
パン教室とは本来2時間で終わらせるのは難しいんですね。他の料理の先生から「あなた、本当に2時間でパン講座できるの?」と聞かれたりもしました。その時は「気合でやってます!」と答えていました。ハハハ。でも、本当は早く作るためにレシピを改良に改良を重ねて研究してましたよ。
あと、ウエル・カルチャースクールに元々パン講座がなかったので専用の道具がほとんどなく、生地を捏ねるボウルは買い足していただきました。また、開講前には、空き時間を借りて、オーブンのコンディションを確認し「ちゃんと点くか」「温度はどれだけ上がるか」など事前チェックもしましたよ。事前にチェックすることはパンだけに限らず、私が常に心掛けていることです。
-パン講座をやって、工夫してることはは何ですか?
甘いパンとそうでなシンプルなパンを交互にやったり、受講生が飽きないように組み合わせています。総菜パンが好きな人、シンプルなパンが好きな人、甘いパンが好きな人、しょっぱい系が好きな人と好みが分かれるので、交互に組み合わせることによって、どこの家が食べても飽きないよう意識してますね。
-パン講座をやっていて気を付けていることは何ですか?
「お家でできる」ということ!お家でも再現できるレシピで講座を行っています。お近くのスーパーで手に入りやすい食材を使って、ご家庭にある道具で再現できるよう教えています。そうするとパン作りが無理なく続けられ、お家でも何回も作ってもらえて、パン作りを楽しんでもらえていますね。なので、レシピは相当考えて作ってますよ。試作、試食を重ねて。
-これまで受講生から好評だったパンの名前を複数教えてください。
一番喜んでもらえてるのはシュトーレンですね。他にもくるみパン、胚芽入り塩バターパン、オニオンブレット、シークヮーサークリームパン、リッチドーナッツ、あんずパンなどがあります。また高菜入りの肉まんも好評ですね。
-最近の価格高騰問題に対して、材料面で工夫してることはありますか?
分量の割合を減らしたり、バターをマーガリンに変えたりは絶対できません。その中でも安い材料を探したり、8回でやる内容の組み合わせを工夫したりしながらやっています。
-今後の目標を教えてください。
今持っている師範資格の最高位である「特別師範」の取得は長年の目標です。この業界に長く携わっていたという証明になると思うので。自分の中で「ここまでやった」と自信につなげるために。
-お家でパンを作るにあたって、これだけは欠かせない道具は何だと思いますか?また、これがあったら意外と助かる便利な道具はありますか?
何はともあれオーブンです。これから購入予定の方は、場所と予算が許せば、容量が大きく二段焼き出来るものをおすすめします。オーブンは大きいだけでストレスが軽減されます。最高温度もより高くできるものがいいですね。
あとは「霧吹き」。100均とかの霧吹きで全然いいんです。通常濡れ布巾をしぼってかぶせて発酵させる方法もありますが、布巾を乗せず霧吹きを吹くだけの方が生地を傷つけるリスクが軽減され、おすすめです。これは私の師匠の方法です。粒子の細かい霧が出る程良いですね。
-「料理人」ではなく「料理講師」を選んだ理由は?
料理を通して人と話しをすることが大事かな。その反応をみて刺激を受けたり、「頑張ろう!」ってなるし。「美味しい」だけじゃなく、もっと細かくやり取りをしたい…家庭科の先生がベースにあるのかなぁ。
-要領よくパンを作るコツはありますか?
パンって待たなきゃいけない時は本当にすることがなくなってしまうので、待ってる間に何をやるかを常に考えてますね。パン作りは流れがあるので、それを踏まえていかに効率的にやれるかが勝負ですね。その為にはチャッチャカチャッチャカやるために、優雅にはできない!体育会系でガンガンやってます。ハハハ。声も自然に大きくなりますよ。パンはパン生地優先なんでね♪
-最後に…金城ベーカリーも行きます?
もちろん!首里の人なんで。給食のパンは金城ベーカリー。私たち首里の子は金城ベーカリーのパンで育ったんで…。
プロフィール
名前:宮城 裕子
1970年生まれ。大妻女子大学短期大学部家政科卒業後、株式会社ジャパンクッキングセンター(辻クッキング新宿小田急校)に入社、入社後は助手期間を経て、教壇試験合格講師となる。在職中は、料理入門及び基礎科の講師を担当。また、外部講師を招いての製パン授業、パン入門クラスでは助手を務める。帰沖後はウエル・カルチャースクールパン教室講師、よんなフード料理講師として活躍中。
資格:食育インストラクター
全国料理学校協会教員師範資格3級