ウエル・カルチャースクール企画【講師に聞く!vol.10】

ウエル・カルチャースクール企画【講師に聞く!vol.10】-0

講師:佐野 周作(サノ シュウサク) 講師

ウエル・カルチャースクール企画【講師に聞く!vol.10】

第10弾は、「クラシックギター」講座の講師を務める佐野周作先生にインタビュー。

 

 

【ウエル・カルチャースクール講師インタビュー】

 

「ギターの音色に魅せられて」

 

―沖縄出身ですか?

いいえ!佐賀県なんですよ。ただ、父の仕事の都合で5歳の頃に日本を出て、それからずっと海外で暮らしていました。南アフリカやイギリスで暮らしていました。本籍である佐賀県の記憶は全く無くて、佐賀の事何も分からないですよ。同じ佐賀の人からは「本当に佐賀県民?」と疑われたりします(笑)

 

―ギターとの出会いつ頃からですか?

 小学5年生の時です。当時、イギリスで暮らしていました。ある日、何家族か集まってのホームパーティーがあって、その主催した家の高校1年生くらいのお兄さんが皆の前でクラシックギターの曲を弾いたんですよ。それを見て一瞬で「この楽器やりたい!」と思いました。その時聞いた曲は強烈に覚えてて、今でも忘れられません。ヴィラ・ロボスというブラジル人ギタリストの『前奏曲第一番』という曲でした。

 

―ギター弾き始めたのは?

あのホームパーティーの後すぐです。両親にギターを買ってもらいました。1万円くらいのギターだったと思います。それからクラシックギターの先生を探して、レッスンを受けるようになりました。クラシックギターの基礎をみっちり練習しました。

 

―止めようと思ったことはなかったんですか?

考えたことなかったですね。気がつくと中学3年まで続けていました。その頃になると、これまでの先生では満足できなくなってました。これまでの先生はどちらかというとジャズのギタリストで、クラシックは基本的な所ばかりしか教えていただけなくて…。そこで、さらに専門的なクラシックギター講師のレッスンを受けたいと思うようになり、ジョン・ベイチ氏という音楽大学でクラシックギターを教えているイギリス人の先生から習うようになりました。

 

―ジョン・ベイチ氏から最初に教わったことは?

 「爪、なんとかしろ!」というのがジョン先生に言われた最初の言葉ですね。クラシックギターはピックではなく爪で弾くんです。そういうことを全然知らなくて…。爪の形の整え方について徹底指導受けました。この教えがいかに重要か、ギタリストになった今痛感してます。爪の形を何遍も試行錯誤しながら整えています。また、ギター講師として受講生の爪の状態を気にするようにし、ケアの大切さを話していますね。「爪、なんとかしろ!」まで強くは言えませんが(笑)

―高校卒業後は?

イギリスにあるバーミンガム音楽院に進学しました。実は、先生であるジョン・ベイチ氏はバーミンガム音楽院でも教えていたたんですね。僕が高校3年生の頃、進路がまだ決まっていなことを話すと、バーミンガムを受験するように言われ、それで受験しました。受験と言っても実技一発で、教授2~3名の前で2曲ギターを弾くというテストでした。緊張しましたが、どうにか合格することが出来ました。

 

 

4年間クラシックギターばかり?

バーミンガム音楽院に行くようになってからは毎日クラシックギター漬けの毎日でした。イタリアにも1ヶ月ほど行きましたね。イタリアではキジアーナという夏に開催されるサマースクールのような各楽器の専攻レッスンを受けましたよ。世界中から集まった名だたる音楽家たちが講師となりレッスンをするんですね。僕はオスカー・ギリアというイタリアのギタリストのレッスンを受けたのですが、怖かったですよ。ちょっとでも間違うと「No!」と𠮟られました。このキジアーナでは、今、日本で有名なギタリストである大萩康司(オオハギ ヤスジ)さんや福田進一(フクダ シンイチ)先生、日本の名だたるギタリストたちと面識が持て、有意義な時間でした。クラシックギター漬けの4年間ででした。

 

 

―バンド組んでロックの道は?

実は…中学生の頃、在イギリスの日本人同士でバンド組んでました。X-JAPANのコピーバンドしてたんですが、難しくて、X-JAPANは挫折しましたね(笑)それ以外にもイギリス人バンドを組んでThe BeatlesやOASISをコピーしたりしました。バンドは軽いノリでやっていたこともあり自然消滅。一方、僕の生活の中に当たり前の様にあったのがクラシックギターで。当然の流れでクラシックギターを続けていきました。

 

―イギリスでプロのギタリストになる夢は?

無かったんですよ。「日本という国を見たい!」という気持ちが強くありました。かといって佐賀に戻りたいわけではなく、漠然と日本に対して憧れを抱いていました。そこで何度か旅行で訪れたことがある沖縄の大学に進学することを決めました。沖縄の海を見た時、イギリスと比べてあまりに開放的で、そこに魅かれたのかもしれません。ウチナータイムには衝撃でしたけどね(笑)

 

―沖縄で講師を始めるきっかけは?

師匠である牧野哲仁(マキノ テツヒト)先生のお蔭ですね。沖縄で英語教員免許を取得し、当然教員になるんだと思っていました。一方、ギターは、当時、宜野湾市にクラシックギターのサークルがあり、そこで弾けたらいいかなくらいでした。そこでクラシックギターを教えていたのが牧野哲仁先生で、先生から「ギターサークルには来なくていいから、君はギターばかりを弾いていなさい。」とおっしゃっていただきました。そこから牧野先生のギター教室のお手伝いをさせていただいたり、コンサート等で演奏のお仕事を受けたりするようになっていきました。

 

―カルチャ―スクールで講師を始めるきっかけは?

琉球新報カルチャ―です。元々、そこでクラシックギターを教えていた大城松健(オオシロ ショウケン)先生が高齢を機に辞めることとなり、そのクラスを引き継ぐ形で講師業をスタートさせました。大城松健先生とは、牧野哲仁先生のご紹介で予め知り合いでした。牧野先生にはお世話になりっぱなしです。

 

―ウエル・カルチャ―スクールで講師を始めたのは?

10年なるかならないくらいだと思います。琉球新報カルチャ―で先に講師を始め、その後しばらくしてウエル・カルチャ―スクールでした。ウエルのクラシックギタークラス、長く続いていますよね。

―クラシックギターの魅力は?

音色ですね。クラシックギターの奏でるギターの音色が好きなんですよ。癒されると言いますか…。小学5年生の時に受けたクラシックギターの音色に今でも虜です。ギターは「小さなオーケストラ」と言われ、伴奏やメロディーを奏でられるし、合奏もできるし、色んな可能性のある楽器だと思います。

 

―講座で大切にしていることはありますか?

3つのことを大切に思い、取り組んでいます。①「基礎練習」アルペジオなどギターの基本的な動きの基礎練習。②「ソロ練習」受講生個々の弾きたい曲をそれぞれ練習し、好きな曲を弾けるようになる喜びを感じて欲しいです。③「合奏」せっかく個人レッスンじゃなくてグループレッスンなので、お互いの音を聞いて、息を合わせて演奏する楽しさを味わってもらいたいですね。時間の都合上、合奏できない場合もありますが、理想としてありますね。

 

―受講生はどういった曲を弾きたがりますか?

みんなバラバラですね。クラシックもいればポップスもいます。「アルハンブラの思い出」という曲に挑戦している方もいますよ。素敵ですよね。

 

―受講生の皆さん、楽譜読めるんですか?難しくないですか?

もちろん!読めない方もいます。ギターにはTAB譜という物があって、ギターの弦をおさえる場所を視覚的に教える譜面があるんですね。楽譜を全く読めない方はTAB譜から始めてもらってます。

 

―受講生の皆さんを最初に待ち受ける難関とは?

 そうだね。コード「F」かな。ただFを全部抑えなくてもできる簡易的な方とかも教えます。全部を抑えるんじゃなくて、3つだけ抑えるとかトレーニング方法はあるんですね。それを繰り返しやっていくと、自然に弾けるようになっていますよ。自転車に急に乗れるようになるみたいな感じかな(笑)

 

―ギターを通して受講生に伝えたいことは?

 伝えたいことよりも、教えてもらうことが多くて、感謝です。イギリス生活が長かったから、日本人の授業に取り組む姿勢であったり、日本の曲のレパートリーなどを教えてもらって、勉強になってます。年配の受講生から「古賀メロディー」を教えていただいたりして、そういう音楽も勉強させてもらって、自分の身になっています。

―受講生とコンサートをしたりしますか?

実は年に2回やっています。僕の受け持つ全クラスで合同コンサートをやっています。ソロで出る方も結構いますし、各クラス合奏曲もやっていて、コンサートに向けて皆で練習もしています。楽しいですよ(笑)

 

―他の楽器の奏者とよくコンサートをされてますよね?

他の楽器とのコラボは楽しいので、どんどんやっていきたいですね。これまで、フルートやフラメンコギターとやったんですけれど、音の出し方やテクニックなど全然違っていて、勉強になりますね。…あ、三線とやってみたいかも。

 

―沖縄クラシックギターギルドとは?

沖縄のギタリストを集めて、県外から有名なギタリスト招待して、一緒にコンサートしたり、マスタークラスを開いたりしていました。福田進一先生に来てもらったり、外国からはスウェーデンやフランスの有名なギタリストを招待してやりました。沖縄のギタリスト達のスキルアップから底上げに繋がればと10年くらいやっていました。

 

―今後の目標は?

自分の持ち曲(レパートリー)を充実させたいという思いが強いです。これまで、講師をしたり、県外からギタリスト呼んだり、みんなのスキルアップに繋がる活動はしてきました。今後は、自分自身の活動を大事にしていきたいと考えています。その中でも目標に据えているのが「バッハ」です!真面目にヨハン・セバスチャン・バッハに取り組みたいと考えています。バッハの作品をしっかりマスターしてクラシックギターで奏でてみたい。演奏家として挑戦します!